汗にも皮脂にも重要な役割がある!!

人は毎日さまざまなシーンでをかき、皮脂を出します。
汗や皮脂といえば、「ベタついて嫌だ!」「メイクが浮いて取れてしまう!」「臭ってないかな?」「ニキビの原因にならないかな?」などなど、とにかく嫌われがち。
汗なんてかきたくない!皮脂なんて出しなくない!と思ったことがある人も多いでしょう。
ですが、汗や皮脂は私たちの身体にとってとても重要な役目を果たしています。


汗や皮脂はどこで作られる?

汗は「汗腺」という場所から分泌されます。
汗腺にはエクリン汗腺アポクリン汗腺の2種類があり、それぞれ汗の性質や汗を出す仕組みが異なります。
ヒトは1日に平均で1.5〜2リットル、最大で12リットルほどの汗をかくと言われていて、あまり汗をかかないように感じる寒い日でも、多くの汗が自然に分泌されています。

◾️エクリン汗腺

エクリン汗腺は全身に存在する汗腺で、特に、手のひら、足の裏、ワキの下に多く存在します。
下で述べる体温調節やストレスを感じた時に出る精神的発汗、刺激物を食べた時に出る味覚性発汗はエクリン汗腺からの汗です。
ここから分泌される汗は99%が水分で、1%にだけ塩分やアンモニアなどが含まれています。
そのため、ほぼ無臭でサラサラしているのが特徴です。
ただ、汗をかいて汚れがつくと菌が増殖しやすくなり、汗臭い臭いが発生します。

◾️アポクリン汗腺

アポクリン汗腺は、わきや乳首、おへその周り、陰部、耳の穴など、限られた部分にのみ存在し、思春期以降に分泌機能が働くようになります。
独立して皮膚に開口しているエクリン腺と異なり、毛根に開口部があります。
ここから分泌される汗には、水分以外にも脂肪やタンパク質などが含まれていて、少し濁った色で粘り気があるのが特徴です。
無臭ですが、皮表に出ると常在細菌によって糖蛋白や脂質などが分解され,臭気を帯びるようになります。
もともとはフェロモンの役割をはたしていたともいわれています。

◾️皮脂腺

皮脂は「皮脂腺」という場所から分泌されます。
“皮脂腺”は皮脂を分泌する器官で、ワックスエステル(約25%)、スクアレン(約12%)、トリグリセライド(約60%)などにより構成されています。
エクリン汗腺やエポクリン汗腺同様、真皮にあります。
皮脂腺は産毛から剛毛まで体毛1本1本に対して存在しており、よって毛包自体を持たない手の平、足の裏には必然的に皮脂腺はありません。
その数は身体の部位にもより異なり、100~1000個/㎠存在します。
頭・顔・胸・背中・手脚の順に多く存在していて、
発達した皮脂腺が多数集まった部位“脂漏部位”では400~1000個の/cm2の皮脂腺が存在しています。


人は何のために汗をかく?

◾️体温調節

汗の最も重要な役割は「体温調節」です。
気温の上昇や運動、カゼの発熱などで体温が高くなった時、発汗が起こります。
汗の水分が皮膚の上で蒸発するときに熱が奪われ(気化熱)、それによって体温を下げて常に36度5分前後に保っています。
体内で熱が生産されたときに、体外へ熱を放出することで熱量のバランスを取っているのです。
もし人が汗をかかなったとしたら、熱が身体の中に籠もってしまい、死に至ることになってしまいます。

汗をかく動物は、実はそんなに多くありません。
しかも暑いときや運動したときに大量に汗をかくのは、人と馬くらいのもの。
ほかの動物は、息を速くして体を冷やしたり、すずしい所や穴に入ったりします。

人や馬は、トレーニングを積めば夏の暑い日でも長時間走ることが可能です。
一方、全身を毛で覆われた動物、例えば犬などは、真夏に走るとなると、15分くらいしかもちません。
人や馬が長時間運動できるのは、「発汗」という機能が備わっているからなのです。

◾️精神的発汗

また、緊張や興奮、不安、怒りといった精神的なものがきっかけとなって、汗が出ることがあります。
この場合は、おもに手の平や足の裏などにどっと汗が出るのが特徴で、手のひらや足の裏を汗で湿らすことにより摩擦を強くして、滑り止めとして危急時の動作や敵との闘争に際に役立っていたとされています。
このような精神性発汗による手のひらの汗は、うそ発見器にも利用されています。

◾️味覚性発汗

また、香辛料が効いた辛いものを食べた時に、顔や頭を中心に汗が噴き出すことがあります。
これは味覚の刺激による反射反応で、食事が終わると汗も引きます。

 

いずれの汗も脳が指令を出すため、自分の意志で汗をコントロールすることはできません。


人はどうやって、何のために皮脂を出す?

皮脂は、皮脂腺の腺細胞が内部で合成した分泌物を多量に蓄積した後、細胞全体が崩壊することによって皮脂腺内腔に放出されます。
つまり、皮脂は皮脂腺細胞の崩壊物全体からなります。
毛穴の内面に開く皮脂腺開口部から毛をつたって皮膚表面に分泌され、「汗腺から分泌される汗」と混ざり合うことで乳化して“皮脂膜”を形成し、皮膚や体毛の表面に薄い膜状に広がり常にヴェールのように覆っています。

皮脂には肌の保護・抗菌、保湿作用がある

皮脂は皮膚膜を形成することで、水分の蒸発を防ぎ、肌や髪のうるおいを保つと同時に、
乾燥やほこりなどの外部刺激や衝撃から肌や髪を保護してくれています。

また、皮脂は身体の各部位を病原菌から守ってくれています。
病原菌は皮脂が苦手なため、皮脂の多い場所は、少ない場所より病原菌が繁殖しにくくなっています。
しかし逆に皮脂が大好きな変わり種の微生物もいて、これが健康的な肌環境を維持する手伝いをしてくれています。
皮脂を分解して脂肪酸を放出し、皮膚のpH値を弱酸性に保ち、酸性の保護膜を維持する働きをしてくれているのです。
皮脂膜は、お肌を弱酸性に保ち、異物や雑菌の侵入を防いでくれています。

このように皮脂は、物理的、化学的に肌や毛髪を保護、保湿していると同時に、
皮膚の表面を弱酸性に保ち、病原菌などを排除する役割も果たしています。


まとめ

嫌われ者の汗や皮脂ですが、人が健康的に生きていく上で欠かせないもの。
皮脂がないと皮膚の水分が蒸発してカサカサになってしまうし、汗をかかないと人は最悪死んでしまいます。

暑い時期のクーラーはとても快適ではありますが、そういった環境に慣れ過ぎてしまうと、私たちの発汗機能は少しずつ衰えていきます。
日ごろから汗をかいて、常に「汗がかける体」にしておくことは、実はとても大切なことなのです。
なかなか汗が出ないと感じる人は、ウォーキング、自転車などの軽い運動、半身浴などで意図的に「汗をかく機会」を増やしましょう。

そして、皮脂の恩恵にあずかるためにも、正常な皮脂量を保つための皮脂バランスが重要です。

皮脂が不足すると、肌が乾燥するだけではなく、肌のバリア機能自体も弱まってしまうため、肌荒れなどのさまざまなトラブルを招いてしまうことにもつながります。
逆に皮脂が多すぎると、てかり、べたつき、化粧くずれ、面皰やにきびなどの要因となります。

過度なクレンジングや洗顔で皮脂を取りすぎないように気をつけつつも、きちんと皮脂汚れやメイクを落とすことも大切です。
また、乾燥しすぎないようにきちんと保湿しつつも、過度な保湿で毛穴を詰まらせてしまってもいけません。
日々変わる自分の肌に合わせて、正しく皮脂膜をコントロールすることが何より大切です。
また、皮脂を適量に保つには、バランスの良い食事(特に緑黄色野菜は重要)、十分な睡眠、適度な運動、ストレスをためない、といったことも必要です。