良い油と悪い油

炒め物や揚げ物など、普段のお料理で使う機会の多い「」。
お肌にも体にもあまり良くなさそうだし、
カロリーが高いからダイエットの敵!と思っている方も多いのではないでしょうか?
油は、全て体に悪い影響を与えるものではありません。
選び方によっては、確かに健康を害するものもありますが、
油を控え過ぎると免疫力が低下したり、肌が乾燥しやすくなったりといった悪影響も。
健康や美容のためには、油も適度に摂取する必要があります。
正しい知識をもって油をうまく選び、健康に役立てましょう!


油ってなに?

「油」すなわち脂質は、炭水化物(糖質)、タンパク質とともに、三大栄養素のひとつです。
炭水化物とタンパク質は1g4kcalなのに比べ、脂質は1g9kcalで一番大きなエネルギー源となります。
なので油の摂り過ぎは肥満などの原因になりますが、一方で人間が活動するためのエネルギー源として欠かすことはできません。
たとえば人間の脳の60%は脂肪でできているといわれていますし、細胞膜やホルモン、胆汁を作る材料になったり、皮膚に潤いを与えるのも油の役割。
皮下に貯えられた脂肪は、いざというときのエネルギー源ですし、体のクッションや保温のためにも役立っています。
また、「油」は脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)やカロテノイドの吸収を助けてくれます。
油は人間が生きていくためには必要不可欠で、重要な働きをしている栄養素なのです。
しかし、必要不可欠な「油」ですが、どんな油でもいいわけではありません。
油には健康に「良い油」と、お勧めできない「悪い油」があります。

脂肪酸ってなに?

油は、水には解けない性質を持ち、グリセリンという物質に脂肪酸というものがくっついてできています。
この脂肪酸の違いで、性質や体内での働きが変わってきます。

脂肪酸は、炭素、水素、酸素の原子が組み合わせって出来ています。
脂肪酸は分類方法によって、「飽和脂肪酸」「不飽和脂肪酸」「トランス脂肪酸」に分けられます。

・飽和脂肪酸とは

飽和脂肪酸とは動物性脂(肉類の他、バターや乳製品など)と一部の植物性油(ココナッツ油、 ヤシ油など)です。
肉類や乳製品に多く含まれ、常温で固形になる油です。
短鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸の3種類があります。
飽和脂肪酸は、酸化しにくいですが、摂りすぎると血液中の中性脂肪やコレステロール上昇や肥満につながりやすい脂肪酸です。

・不飽和脂肪酸とは

不飽和脂肪酸とは主に植物性油で、植物や魚に多く含まれ、
常温で液体になる油であり、サラダ油やオリーブオイルなどがこれに当たります。

この「不飽和脂肪酸」は、さらに
「一価不飽和脂肪酸」(オレイン酸=オメガ9)と
「多価不飽和脂肪酸」(リノール酸=オメガ6、α-リノレン酸=オメガ3)に分けられます。

この「多価不飽和脂肪酸」(リノール酸=オメガ6、α-リノレン酸=オメガ3)だけは、体の中で作られないので、食べ物から摂取する必要があります。
そのため、「必須脂肪酸」と呼ばれています。

油の中で、特に大切なのは、体の中で作ることのできない「必須脂肪酸」、つまり「多価不飽和脂肪酸」のオメガ6とメガ3なのです。

・トランス脂肪酸とは

トランス脂肪酸は、植物性油を原料とし、油の性質を人工的に変えたもので、不飽和脂肪酸に水素を加えて加工したり、熱を加えたりした時にできます。
マーガリンやショートニングなどの加工油に多く含まれています。
トランス脂肪酸は、摂りすぎると悪玉コレステロールが増加し、善玉コレステロールが減少するため、日常的に摂りすぎている場合動脈硬化や心筋梗塞の危険性が高まるという報告があります。
トランス脂肪酸は不飽和脂肪酸の分類ではありますが、働きとしては飽和脂肪酸と似た働きを持っているのが特徴です。

体に良い油、悪い油

私たちの体を構成する 60 兆個の細胞は、体の部位により働きや形などが異なるものの、細胞膜という「油の膜」に包まれていることが共通点です。
ですから「油の摂り方」がとても大切です。
局所ホルモンは炎症反応や神経伝達など体内環境を一定に保つ上で様々な役割を担っていますが、それらのコントロール機能は全て細胞に摂りいれる「油の質」に 左右されます。

油には身体に良い油と悪い油があります。

身体に悪い油と言われているのが、上で述べた飽和脂肪酸トランス脂肪酸
血中の中性脂肪やコレステロールを増やしたり、動脈硬化や心疾患のリスクをあげたりすると言われています。

一方、身体に良い油といわれるのが、「不飽和脂肪酸」。
不飽和脂肪酸は、HDL(善玉)コレステロールを増やしたり、LDL(悪玉)コレステロールを減らしたり、心疾患のリスクを減らしたりする機能があると言われています。
オメガ3系、オメガ6系脂肪酸等がありますが、特にオメガ3系は「良い油」として挙げられます。

では、これらの油をどのくらいの割合で摂取すればいいのでしょうか。
理想の割合は、オメガ6系脂肪酸:オメガ3系脂肪酸=4:1の割 合で摂取するのが望ましいと言われています。

ただ、普通に食事をしていると、たいていオメガ6が極端に多くなりがち。
日本人の食事では、オメガ6系脂肪酸は過剰摂取の傾向があり、オメガ3系脂肪酸は不足している傾向があります。
現代人ではオメガ6系脂肪酸:オメガ3系脂肪酸= 10:1、極端な場合だと50:1にもなると言われています。
オメガ3は意識しないと摂取できていないことが多いので、オメガ3を意識することなどから始めることがお勧めです。


これを摂ろう!

今までのお話で、油の重要性や、良い油、悪い脂があることをお分かりいただけたかとは思いますが、
では具体的に、どんな油を積極的に摂った方が良いのでしょう。

結論からいうと、体にいい油の圧倒的なトップ3は魚油アマニ油えごま油です。

オメガ3系脂肪酸 (DHA、 EPA) : 魚の油
EPA(エイコサペンタエン酸)
魚介類やのりなどに含まれる油状の液体。
血液の凝固を抑え血栓を予防・血液中の中性脂肪を低下させ、動脈硬化や高血圧症などを予防・悪玉コレステロールを減らしてくれます。
DHA(ドコサヘキサエン酸)
高脂血症、高血圧などの予防・脳の働きを正常に保ってくれます。
多く含まれる食材
・イワシ、マグロ、サバ、ブリ、サンマ 等

DHA と EPA 合わせて 1 日 1000mg 以上摂取する事が
推奨されています。
出来れば毎日、 少なくとも 2 日に 1 回は 魚料理を食べましょう。

オメガ3系脂肪酸 (αリノレン酸) : アマニ油、えごま油
α‐リノレン酸が体内に入るとがん細胞が増えるのを抑え、血圧を下げ、体内でEPAに変化して血液をサラサラにし(脳卒中や心筋梗塞、動脈硬化を予防)、DHAにも変化して頭の働きを良くしてくれます。
毎日小さじ1杯のアマニ油を取れば、昔より魚を食べなくなった現代日本人に欠乏しているα‐リノレン酸を補えます。
アマニ粒または粉末大さじ2杯でも、同じ量のα‐リノレン酸を取ることができます。
多く含まれる食材
・亜麻仁油・シソ油・エゴマ油・クルミ 等

ならば炒め物も揚げ物もすべてアマニ油かえごま油で!思うところですが、ここで注意すべきポイントは「加熱」。
素晴らしいα‐リノレン酸ですが、酸化しやすいため加熱調理には向きません。
また、アマニ油とえごま油は高価で毎日大量に使いづらいため、サラダのドレッシングに使ったり、スープの仕上げに垂らしたり、マリネ
やカルパッチョなど生食用として使用しましょう。
魚の油が少ない時期に、焼き魚を仕上げた最後にかけたり、納豆や冷や奴にかけるのもお勧めです。

炒め物や揚げ物などには、下記のオリーブオイルや菜種油などを使い、調理後はできるだけ早く食べるようにしましょう。

オメガ9系脂肪酸 (オレイン酸) : オリーブオイル、 なたね油
α‐リノレン酸とは逆に、火を通しても酸化しにくい(悪い油にならない)のがオレイン酸(オメガ9)を含む油です。
オレイン酸は火を入れても酸化しにくいだけでなく、血中コレステロールを下げ、胃腸の働きを強化し、胃の不調や便秘を改善する働きがあります。
オリーブオイルを大量に取る地中海沿岸では、飽和脂肪酸が多いバターや生クリーム、肉を多く食べる地域に比べて心臓病による死亡率が低いとの報告もあり、「地中海式ダイエット」の食材の一つとしてオリーブオイルが注目された時期もあります。

ただ、病気の予防、健康にいい、と思って取りすぎると、余剰カロリーが結果的に余分な脂肪に変わり、本末転倒です。
「加熱用に使うときはこの油を」という程度に考えるようにしましょう。

オメガ3、なぜ良い?

不飽和脂肪酸のひとつである「オメガ3系脂肪酸」は、現代人が唯一不足している脂肪酸です。
多くの食品に含まれているリノール酸とはちがい、オメガ3が豊富な食品は限られています。
また現代は肉中心の食事が多く、オメガ3が豊富な魚をあまり食べなくなったこともオメガ3が不足している原因です。

オメガ3系は肌や髪を美しく保ったり、血行を良くしたり、脳の発育を助けたりする機能もあります。

また、悪玉コレステロールを下げる作用だけでなく、善玉コレステロールを上げる作用もあります。
悪玉コレステロールは、細胞の膜やホルモンの材料になるため体にとって必要不可欠なものです。
しかし、多くなりすぎると血管の壁にコレステロールを付着させるため動脈硬化の原因になります。
一方、善玉コレステロールは、血管の壁に付着したコレステロールを回収する役割があり少なすぎると動脈硬化の原因になります。
そのため、オメガ3系を摂取することで、動脈硬化の予防につながり脳卒中や脳梗塞、心筋梗塞の発症リスクを下げてくれる効果が期待できます。

他にも、オメガ3には、アラキドン酸による炎症を抑える作用があります。
本来であれば多少アラキドン酸による炎症が起こっても、オメガ3がその炎症を抑えてくれます。
しかし、オメガ3が不足すると炎症を止めることができず、アレルギーをはじめとするさまざまな病気を発症してしまうのです。

またオメガ3は酸化しやすい脂肪酸ですが、体内に取り込まれると抗酸化作用を発揮する不思議な性質を持っています。
その性質を活かして細胞膜の酸化を防ぎ、細胞膜に適度な柔軟性を持たせます。
柔軟性のある赤血球は毛細血管でも詰まることなく、動脈硬化が発症しにくくなります。
さらに柔軟性がある細胞膜は、細胞に必要な栄養を取り込んで細胞を活性させます。
細胞の活性化は細胞が形成する臓器、血液、骨、筋肉、神経、皮膚など、全身の活性につながります。

そしてオメガ3の中でも、脳の働きに欠かせないのはDHAです。
さまざまな情報交換をおこなう脳神経細胞には、DHAが20%以上含まれていないと正常に機能しません。
認知症やうつ、注意欠如・多動症患者の脳内は、DHAが非常に少ないことが分かっています。

他にも、オメガ3系は体内の脂質代謝を改善するので太りにくい体になったり、中性脂肪を減らす他、
認知症予防・美肌効果・便秘解消など嬉しい効果がたくさんあります。

このような働きがあることから、オメガ3系脂肪酸は”健康に良い油”と言われており、積極的に摂るべき油と言えます。


これは避けよう!

最も身体に悪い油は、トランス脂肪酸と酸化した油です。

トランス脂肪酸

トランス脂肪酸とは人工的に作られた油で、植物性油脂に水素添加や高温処理をすることで生成される油脂です。
主に、マーガリン・ショートニング・マヨネーズ・サラダ油、コーヒーフレッシュ、ケーキ、クッキー、ファーストフード、インスタント食品、菓子パン、フライドポテトなどが挙げられます。
また、高温で調理された揚げ物も要注意。油に熱を加えすぎるとトランス脂肪酸に変わっているのです。

トランス脂肪酸は別名「食べるプラスチック」「狂った油」とも呼ばれており、体内に入ると細胞膜を変質させ、細胞の働きを狂わせてしまいます。
LDL(悪玉)コレステロールを増やす一方、HDL(善玉)コレステロールを減らして動脈硬化のリスクを高め、
近年ガンや悪性リンパ腫の出現を引き起こすことが判明しています。
そのため、アメリカをはじめ欧米諸国では、含有量の規制や表示が厳しく規制されているほどです。

酸化した油

そして、どんなに良い油であっても酸化してしまったら話になりません。
酸化した油を摂ってしまうと活性酸素を口にしているのと同じなので、害があるのは当然です。
油は、熱・光・酸素に弱く、そのような要素に長い時間晒されていると劣化し、酸化した油になってしまいます。
酸化した油はどんな油であっても身体に悪い油になってしまっています。
長く加熱されている油や調理後時間のたった油は酸化している可能性が高いので気を付けましょう。
調理してから時間が経つとトランス脂肪酸に変化するとも言われているので食べるときは揚げたてを食べましょう。

酸化しにくい油でも加熱や光、酸素によって酸化してしまうので、どんな油でも出来るだけ少量ずつ購入し、光の当たらない冷しいとことで保管し、開封後は早めに使い切るようにしましょう。

リノール酸

摂るだけで体に害となるトランス脂肪酸と酸化した油の次は、摂り過ぎると体に悪いリノール酸です。
不飽和脂肪酸のひとつであるオメガ6系脂肪酸の、代表的な脂肪酸であるリノール酸。

では、リノール酸を摂り過ぎると、体内にどんな影響が起こるのでしょう。
まずリノール酸は体内に入ると、アラキドン酸という脂肪酸に変化します。
アラキドン酸は、免疫機能の調整や脳の働きに関わる大切な脂肪酸です。
しかし増えすぎると、炎症物質をつくって体内に炎症を起こす危険性を持ち合わせています。
リノール酸の摂り過ぎによって、アラキドン酸による炎症が起こった体は、さまざまな病気を発症しやすくなります。
そのひとつは近年急激に増加したアレルギー症状です。
アトピーや花粉症などのアレルギー症状は、アラキドン酸による炎症を止めようと免疫機能が異常反応を起こし、炎症物質以外にも敏感に反応することで起こります。
またアラキドン酸による炎症は、動脈硬化が引き起こす心疾患と、脳疾患にも関係があります。
まずアラキドン酸は活性酸素を発生させて、悪玉コレステロールが酸化されやすい体内環境をつくります。
活性酸素によって酸化した悪玉コレステロールが増えると、アラキドン酸による炎症が酸化した悪玉コレステロールを傷つけて、動脈硬化を引き起こすのです。
さらにアラキドン酸による炎症は、タバコや過度な飲酒などによって傷ついた細胞をがん化させます。
がんの要因として危険視されているタバコや過度な飲酒は、細胞を傷つける第一段階。
傷ついた細胞をがん化させるのは、アラキドン酸による炎症なのです。

上でも述べた通り、現代人はリノール酸を摂り過ぎていると言われています。
そもそもリノール酸はサラダ油や大豆油をはじめとする植物油、植物油を使用した加工食品、米、野菜など多くの食品に含まれています。
そのため毎日の食事で十分補えるので、わざわざリノール酸が多い油を摂る必要はありません。
それにもかかわらず家庭ではサラダ油が日常的に使われ、リノール酸の多い植物油を含んだ加工食品が溢れています。
そのため現代の食生活では、すぐにリノール酸の摂り過ぎとなってしまうのです。

アラキドン酸による炎症を起こさないようにするには、リノール酸の多い植物油(サラダ油や大豆油など)や植物油が含まれている加工食品を摂らないことが大切です。
揚げ物(唐揚げ、天ぷら、とんかつなど)には、オメガ6脂肪酸が多く含まれるので毎日は食べないようにしましょう。
市販のドレッシングもオメガ6脂肪酸が多く含まれるので、サラダにはドレッシングの代わりにオリーブオイル、アマニ油、エゴマ油をお勧めします。
味が物足りない時は、だし醤油やバルサミコ酢で味付けをするとおいしいです。

普段の食事から高オメガ3、低オメガ6、脱トランス脂肪酸を意識して油を摂るようにしましょう!

また、飽和脂肪酸である肉の脂、バターやラードなどの動物性の脂も避けたい脂の一つです。
コレステロールの原料となり、動脈硬化を引き起こす危険性が増えるため、とりすぎはよくないと言われています。
これらの油は、普通に食事をしていたら、食品からもたくさんとれるので、不足することはまずありません。
そのため、食事以外から余分に摂ることはできるだけ避けるようにしましょう。


<まとめ>

三大栄養素の一つとして知られる「脂質」。脂質は身体にとって必要な物です。
人体の細胞60兆個の細胞膜が油でできて、脳の60%を脂肪が占めていたりするのですから、その重要性は計り知れません。
それだけでなく、良い油は身体の「炎症」を防ぐという大きな役割も果たしているのは上で述べた通りです。

ですが、油には避けた方がいいものもあることも、お分かりいただけたかと思います。
「油=不健康」ではなく、「悪い油=不健康」 なのです。
また、油は食事の中にたくさん隠れています。危険な油は避けたいところですが、調理油からドレッシング、パンに塗るバターまで食事に油は欠かせないものとなっており、油と無縁の食生活を送ることは不可能でしょう。
だからこそ、安全性を無視した低価格の危険な油ではなく、体内の働きを高める安全な油を選ぶなど、
カラダに良い油を上手く活用できるといいですね。
油はカロリーが高く摂り過ぎは健康を損なう原因ともなりますので、取りすぎには注意し、
上手に摂って健康に役立てていきましょう!!