脂肪酸とは?!その種類と役割について

脂肪酸とは?

脂肪酸とは、脂質を構成する重要な成分の一つです。

脂質の主要な構成要素で、脂肪酸が他の様々な形体の物質と結びつくことで脂質を形成しています。

食品中の脂肪の9割が脂肪酸でできています。
肉の脂肪、魚の油、植物油など一見違った脂肪に見えますが、その成分はほとんど脂肪酸です。

脂肪酸は、
・ 細胞のエネルギー源
・ 人体の細胞膜、ホルモン、核膜などを構成
・ 皮下脂肪として臓器や外部刺激(寒さや物理刺激)からの保護(バリア機能)
・ 脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)の吸収促進
などの働きがあり、人の健康にとって必須の成分です。


脂肪酸の種類

脂肪酸には多くの種類がありますが、大きく「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分けられます。
炭素同士が二重結合せず水素と結合している(飽和している)のが「飽和脂肪酸」、炭素同士が二重結合しているのが「不飽和脂肪酸」です。

また、不飽和脂肪酸はさらに「一価不飽和脂肪酸」と「多価不飽和脂肪酸」に分類されます。
二重結合が1つのものを「一価不飽和脂肪酸」、2つ以上のものを「多価不飽和脂肪酸」です。

◾️飽和脂肪酸

乳製品、肉類などの動物性脂質、ココナッツオイル、パーム油などに多く含まれています。
特に、牛肉は飽和脂肪酸の割合が52%を占めており、バターにいたっては62%が飽和脂肪酸といわれています。
飽和脂肪酸を多く含む脂肪は融点が高いため、常温で固体のものが多いことが特徴です。
人間の体内でもつくることができ、糖質から合成されます。

飽和脂肪酸は生体にとって重要なエネルギー源ではありますが、飽和脂肪酸を摂取し過ぎると、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の血中濃度が増加し、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が低下することがわかっています。
そのため飽和脂肪酸の過剰摂取は生活習慣病の発症リスクを増加させるとして、近年ではできるだけ控えた方が良いとされています。

◾️一価不飽和脂肪酸

一価不飽和脂肪酸は、常温では液体で、オメガ9系脂肪酸とも呼ばれています。
一価不飽和脂肪酸にはよく知られているものとして、オリーブオイルの主成分であるオレイン酸があります。
オレイン酸はHDLコレステロール(善玉コレステロール)は減らさずに、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)だけを減らしてくれる作用を持つとされ、健康的な油として認識されています。
また、他の脂肪酸と違い、酸化されにくいという特徴があります。
なお、一価不飽和脂肪酸は必須脂肪酸ではないため、厚生労働省の定める食事摂取基準では摂取目標量や目安量が設けられていません。

◾️多価不飽和脂肪酸

多価不飽和脂肪酸は、構造の違いからさらにn-3系脂肪酸(オメガ6系)n-6系脂肪酸(オメガ3系)の脂肪酸に分類されます。
n-3系脂肪酸は、α-リノレン酸、IPA(イコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)などがあり、α-リノレン酸は体内でIPAに変換され、さらにDHAへと変化する脂肪酸です。
n-6系脂肪酸であるリノール酸は、体内でARA(アラキドン酸)を作り出す働きがあり、さらにイコサノイドと呼ばれる生理活性物質にも変換されます。

特に、n-3系脂肪酸のドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)などは、世間的にもよく知られています。
この2つの脂肪酸は魚に多く含まれていて、サプリメントとしても数多く市場に流通しています。
そして今注目されているのが、EPA・DHAと同じ仲間の「α-リノレン酸」です。
エゴマ油・亜麻仁油には「α-リノレン酸」が多く含まれていて、健康志向の方に注目されています。

多価不飽和脂肪酸(n-6系脂肪酸、n-3系脂肪酸)は体内で合成できないため、食事からの摂取が必要な「必須脂肪酸」といわれています。
血圧を下げる働きが期待され、さらにLDLコレステロールの低下に役立ちます。
しかし、これらは酸化されやすいため加熱料理には向いていないので、ドレッシングにしてサラダにかけたりと上手に利用しましょう。

◾️トランス脂肪酸

不飽和脂肪酸には、シス型とトランス型があります。シス型、トランス型は二重結合の炭素に結びつく水素の向きで決まります。
水素の結びつきが同じ向きになっているほうをシス型といい、互い違いになっているほうをトランス型といいます。
このトランス型になった脂肪酸をトランス脂肪酸といいます。

トランス脂肪酸は、不飽和脂肪酸の一種ですが、飽和脂肪酸に近い性質があります。
一般に、飽和脂肪酸は融点(固体が液体になり始める温度)が高く、常温では固体、不飽和脂肪酸は融点が低く常温で液体ですが、トランス脂肪酸は常温で固体です。

トランス脂肪酸は、植物油などからマーガリンやショートニングなどを製造する際や植物油を高温にして脱臭する工程で生じる脂肪酸です。
天然でも、牛などの反芻(はんすう)動物胃の中で微生物により生成されます。

牛肉、羊肉、牛乳、乳製品などの天然の食品中
マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング、食用調合油、マヨネーズやそれらを使用した料理等に含まれています。

このトランス脂肪酸は、悪玉コレステロール(LDL)を増加させ、さらに、善玉コレステロール(HDL)を減少させる働きがあるといわれています。
多大に摂取すると、動脈硬化や心臓疾患のリスクが高まるとされており、これは飽和脂肪酸と似た作用といえます。

このためWHO(世界保健機関)では、トランス脂肪酸の摂取量を一日の総エネルギーに対して、1%未満とするよう目標値を定めています。
諸外国ではトランス脂肪酸の使用禁止や含有量の表示が義務付けられているなど非常に厳しく管理や制限がされている一方、
日本はトランス脂肪酸が取り上げられることも少なく、日本ではまだトランス脂肪酸の基準値はありません。

と言うのも、日本でのトランス脂肪酸の平均摂取量は0.31%と、米国の1.1%より少ないそうです。
これは日本と海外と食事や食文化の違い方くるものです。
WHOの目標である対総エネルギー摂取量の1%未満を下回っていることから、日本ではトランス脂肪酸の健康への影響は小さいと考えられています。
日本人の成人女性は半数が飽和脂肪酸の目標量を超えているので、日本ではむしろ飽和脂肪酸の摂りすぎの方が気をつけなければならないと言えるでしょう。


まとめ

「脂質」と言うと、肥満や動脈硬化などの原因になるなど「健康に悪い」というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。
確かに、「飽和脂肪酸」や「トランス脂肪酸」を過剰に取りすぎてしまうと、悪玉コレステロールが増え、健康上に弊害があります。
ですが、 脂質は私たちの体内に蓄積される貴重なエネルギー源です。
私たちはエネルギーの約25%を脂肪からとっていて、脳は水分を除くと約70%は脂肪からなっているのです。
脂質は身体にとって非常に重要な栄養素なので、
決して完全に摂らないようにするのではなく、
特定の脂肪酸に偏らずにバランス良く適量摂取することが重要です。

特にDHA、EPEに関しては、健康に良いイメージを持っている方も多いと思います。
実際に必須脂肪酸と言われるこれらの物質は体内で合成できないため、食事からとる必要があり、適量の摂取が健康上プラスになるという研究報告が多く出ています。
現代の食生活では、肉類などの飽和脂肪酸は摂りすぎていて、魚などのn-3系脂肪酸は不足しがちな傾向にあります。
摂取する脂肪酸は、飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸の比を3:4:3に、n-3系:n-6系の比を 1:4にすることが望ましいとされています。
毎日とっている脂肪の内容を見直して、良い脂質であるEPA、DHA、α-リノレン酸を積極的に摂り、摂りすぎると悪い脂質となる飽和脂肪酸、トランス脂肪酸を少なめにするようにしましょう。

脂身の多い肉はあまり食べないから大丈夫、と思っていても、生クリームやバターをたっぷり使った菓子パンやケーキ類、チョコレート、そしてカップラーメンなどの即席めんには多くのトランス脂肪酸が含まれてます。
何を食べたらいいのかわからない!と言う方は、和食を積極的に食べるようにしましょう。
米を基本に、漬物、汁物、おかず(魚介類、野菜など)を組み合わせた和食は、小麦と畜肉が多い欧米型の食生活にくらべて、栄養供給の面でバランスがとれていて、健康保持のために望ましいといえます。

生体内でエネルギーとして使われたり、生理活性物質として働いたりする脂肪酸。
その恩恵にあずかるためには、偏った食べ方をせずに脂肪酸をバランスよく摂ることが大切です。
そのためには、できるだけ和食中心の食生活を心がけ、魚を1日1回ほど食べ、肉や乳製品からの動物性脂質ばかりに偏らないようにしましょう。