“幹細胞”とは?!先端の再生医療から最新美容まで着目されている“幹細胞”について

最近よく聞く「幹細胞」。
なんとなく美容に良さそうなイメージはあるけど、そもそも幹細胞ってなに?
ヒト幹細胞に植物に動物と、いろいろあるけどどう違うの?
今回はその疑問にお答えするべく、最先端の医療、美容で高い注目を集める“幹細胞”について、詳しくご紹介します!


■幹細胞とは?

人間は、はじめはお母さんのおなかの中にあるひとつの細胞(受精卵)から始まります。
このひとつの細胞が、何回も細胞分裂を繰り返し、約280日間でヒトの形を作りあげます。
このように、ヒトは最初1つの細胞から始まるとっても多様な細胞たちの固まりなのです。
ヒトの身体は全部で約60兆個の細胞でできていると言われており、生命活動を維持するために常に新しい細胞と入れ替わっています。

私たちの身体のなかには、皮膚や血液のように、ひとつひとつの細胞の寿命が短い細胞も多く存在します。
その絶えず入れ替わり続ける組織を保つために、私たちは失われた細胞を再び生み出して補充する能力を持った細胞を持っています。
また、組織が怪我をしたりダメージを受けたりしたときも失われた組織を補充する能力を持った細胞が必要となります。
こうした能力を持つ細胞を「幹細胞」と呼びます。
この「幹細胞」がいるから私たちは受精卵から成長し、また大人になってからも生体を維持していくことができるのです。

■新しい細胞に置き換えられるスピードって?

細胞には寿命があり,役割を終えた細胞は新たな細胞に置き換えられると上記でお伝えしましたが、
では一体そのスピードとはどれぐらいなんでしょうか?
そのスピードは、組織によって異なっています。
ものすごく置換の早い小腸上皮細胞の寿命は,わずか1日か2日。
大きな臓器でサイズの変化がない肺、肝臓や膵臓などでも、細胞は頻繁に交換されています。
特に、体外から取り入れた化合物を解毒する機能をもつ肝臓では、肝細胞が障害を受けるやいなや細胞数が激減しますが、通常3日程度で新しい肝細胞で修復されます。
一方、心臓を動かしている心筋や卵巣に含まれる生殖細胞の卵子は,生まれた後増えることはありません。
このことは、あらゆる組織には固有の特性をもつ細胞供給源があることを示しています。

■幹細胞と呼ばれるには、次の二つの能力が不可欠

一つは、わたしたちのからだの細胞であれば、異なる種類の細胞を新規に作り出すことができる能力(分化能)、
もう一つは、皮膚や脂肪や血液のように、自分と同じ能力を持った細胞に分裂することができる、つまり幹細胞が幹細胞に分身する能力(自己複製能)です。

簡単に表現すると、
分化能=体のいろんな部位に変身できる能力
自己複製能=自分を増やすことのできる能力
というとわかりやすいでしょうか。

この2つの能力を併せ持つことにより、発生や組織の再生が可能となります。
骨や軟骨になる幹細胞は、もちろんその幹細胞として、自分自身を複製する能力を持っていますし、少なくとも骨や軟骨といった別々の組織や細胞を作り出す能力を持った細胞といえます。
血液の幹細胞もこれと同じで、自分自身でも増えていきますし、白血球や赤血球を作り出すもととなっています。自己複製能と多分化能を持っているのです。

■幹細胞治療で期待できる効果

現在、再生医療として受けることができる、もしくは将来その可能性がある幹細胞は、大きく3種類あります。
それは、不妊治療で不要となった受精卵の胚から取り出した幹細胞を増殖させた「ES細胞」、
自分自身から幹細胞を取り出して4遺伝子を加えて人工的に未分化な状態に逆戻りさせた「iPS細胞」、
もともと私たちのからだの中に存在している「体性幹細胞(MSC)
です。

この大きく3種類の幹細胞の中で、最も医療への応用が進んでいるのは「体性幹細胞」です。
人間の体の中にもともとある細胞を使うため、治療に応用しやすい特徴があります。

「体性幹細胞」には、いくつか種類があり、その代表的なものに「間葉系幹細胞」があります。
間葉系幹細胞」は、骨髄や脂肪、皮膚など全身の様々な場所に存在していて、
脂肪細胞、軟骨細胞、骨芽細胞へと分化する能力があります。

幹細胞治療は寿命や傷によって失われた細胞に代わって新しい細胞を増やし、機能を取り戻すことを目的としています。
新しい細胞に入れ替わると組織や臓器が正常な機能を取り戻すとされ、さらには若返りもできると期待され、研究が進められてきました。
しかし、再生治療の多くが実験的にとどまっており、実用化にはいたっていません。
なぜならES細胞、iPS細胞は癌化のリスクや倫理的な問題などが浮上し、安全性と効果が十分に確認されていないのが現状だからです。
一方、成人の骨髄、脂肪組織や歯髄などから比較的容易に採取することがきる間葉系幹細胞は、それらの問題が少なく利用しやすい幹細胞として、近年、研究および臨床応用が盛んに行われており、これから世界的な製剤効果を生み出すと考えられています。

■なぜ今、脂肪由来の間葉系幹細胞が増えているのか

1960年代にまず骨髄から発見され、ついで2001年に脂肪からの間葉系幹細胞が発見されました。
骨髄由来のものが早くに発見されたため、骨髄液から採取した間葉系幹細胞が治療に多く用いられきましたが、
現在では脂肪由来を再生治療に応用する研究が増えてきています。
その理由として、
骨髄細胞と比較して脂肪細胞は容易にかつ低侵襲に大量採取できることが一番にあげられます。
そして、細胞増殖が速いこと、再生促成因子を多く分泌すること、免疫抑制能が高いことも、理由としてあげられます。
今後ますます、脂肪由来幹細胞の可能性が広がることでしょう。

■「幹細胞コスメ」とは?

「幹細胞コスメには幹細胞が入っているの? 」と思うかもしれませんが、そういうことはありません。
もし、幹細胞自体が入っていると宣伝文句でうたっている商品があれば、そんなことは絶対にないので注意が必要です!
正確には、幹細胞を増殖させた際の培養物から取り出した「培養液」と呼ばれるものや、幹細胞に直接働きかける成分などが含まれたコスメのことを意味します。

■化粧品への応用の観点から見ると、大きく3つあります。

・ヒト幹細胞

医療や美容において頻繁に使われるのは、ヒトの皮下脂肪から採取した脂肪由来の幹細胞です。
医療機関では、ヒトの脂肪組織から幹細胞を分離して培養して数千万個から1億個に増やして、それを体に戻すという治療が行われています。
幹細胞を培養する際の“上澄み液”(培養液)には、多くの成長因子を含む百十種類の活性物質が含まれており、その培養液を化粧品の材料ととして使用します。
人間の細胞の表面にはその特定の機能をスタートさせる “レセプター”というカギ穴のようなものがあり、ヒト幹細胞培養液には、その穴に合致するカギになる成分(成長因子や活性物質)が豊富に含まれ、細胞が活性化し、最も効果が期待できると考えられています。
ヒトが元々持っている成長因子や活性物質が含まれているため、ヒトの肌への馴染みが最も良いとされ、アレルギーも少なく安全性が高いと言われています。
ただし、高価なのがデメリットではあります。

・植物幹細胞

植物における幹細胞は、栄養成分が豊富で、細胞分裂が活性化している場所である種子の中の胚や根の先端、茎の付け根といった植物の成長に重要な部位に存在し、様々な細胞に分化させる能力(多能性)を持っています。
ヒト幹細胞のような“鍵と鍵穴”のような仕組みはないのですが、抗酸化力・保湿力に期待できる幹細胞です。
アレルギー作用も少なく、肌を保護したり肌状態を改善したりする作用に優れています。
中でも美容効果が高いとしてよく知られている代表的な成分が、りんご幹細胞です。

<リンゴ幹細胞エキス(アップルセルエキス)>
スイス原産で”4か月腐らないリンゴ”として有名な「ウトビラー・スパトラウバー」から抽出。
表皮幹細胞の自己再生能力を促進させ、抗酸化力が高く、活性酸素を除去する作用があります。

・動物幹細胞

主にヒトの皮膚幹細胞と構造が似ているといわれる羊やブタ、馬などの動物の胎盤から採取された幹細胞が使われています。
プラセンタは動物由来が多いです。
ヒトの皮膚に塗布して細胞の活性化が期待できると言われていますが、アレルギーを発症するリスクも否定できず、安全性の面の危惧から国内ではまだ流通していません。


化粧品、美容治療そして再生医療において注目の高い“幹細胞”。
新しい技術でもあり、やや複雑で分かりにくかったその正体について、お分かりいただけましたでしょうか?
最近は特に化粧品分野でも「幹細胞コスメ」が目立っており、
加齢によって失われる肌のハリつや・たるみ・毛穴の開きなど、衰えてしまった機能の修復が期待されるとして、アンチエイジングケアコスメとして人気が高まっています。
幹細胞コスメにはいくつか種類がありますが、本稿を読んだあなたは、そのコスメが
何の幹細胞培養液を使用しているのか(主に植物由来幹細胞なのか、ヒト幹由来細胞なのか)
ヒト由来幹細胞培養液の場合、どの部分で作られているのか(脂肪、神経、歯茎、皮膚、臍帯血など)
をチェックすることができるはず♪
前もってメリットとデメリットを確かめて、自分に合った最適な幹細胞コスメを見つけることができれば、いつまでもキレイな肌を保つことにより一歩近づくことができるかもしれません♪