腸活の新習慣、酪酸菌とは!?健康のカギを握るその実態と酪酸菌を増やす方法

腸活」という言葉が頻繁に聞かれるようになった昨今。
健康意識が年々高まっていることと、腸内細菌の研究が進み健康との関わりなどが明らかにされたことも相俟って、
腸活はますますブームとなりつつあります。
その中でも、最もホットなキーワードが「酪酸菌」。

今までは、腸活というと「乳酸菌」や「ビフィズス菌」などの善玉菌を摂取することが主流と言われてきましたが、
実は今、最も注目されているのは「酪酸菌」であり、健康のカギを握るとまで言われています。

酪酸菌とはいったい何なのか。
それは、一体驚きの作用をもたらすのか。
今回は、ぜひ知っておきたい「酪酸菌」について解説します。


酪酸菌とは?

酪酸菌とは大腸に存在する腸内細菌で、食物繊維を分解酪酸を作ります。
「酪酸菌」は、1種類の菌の名前ではなく、酪酸を作る菌の総称として「酪酸菌」と呼ばれています。
また、酪酸は「短鎖脂肪酸」の1つです。

短鎖脂肪酸とは

短鎖脂肪酸は大腸に存在する腸内細菌が作る酸の1つ。短鎖脂肪酸の代表的なものに酪酸のほか、酢酸やプロピオン酸があります。
この短鎖脂肪酸は、健康的な腸内環境を保つのに重要な役割を担っています。

短鎖脂肪酸は、腸内を弱酸性に保ち腸内にある悪玉菌が発育することを抑制し、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が住みやすい環境を作るのに役立ちます。
また、肥満予防や腸の炎症予防、免疫機能の調整など、様々な健康効果があることで注目されています。

★腸内で産生される主な短鎖脂肪酸・・・酪酸、酢酸、プロピオン酸

酢酸はビフィズス菌でも作り出せますが、酪酸を作れるのは酪酸菌だけです。乳酸菌やビフィズス菌は、酪酸を作ることができません。


★短鎖脂肪酸を産生する菌・・・酪酸菌、ビフィズス菌

短鎖脂肪酸は、ビフィズス菌や酪酸菌などの腸内細菌によって増やすことが可能です。

腸内細菌が作る短鎖脂肪酸のうち、酢酸とプロピオン酸の一部は大腸で消費されますが、ほとんどが大腸の粘膜から吸収され、血流に乗って全身へ。肝臓や筋肉、腎臓などに運ばれたのち、エネルギー源や脂肪を作るための材料になります。
一方、酪酸はその多くが直接、大腸の粘膜上皮のエネルギー源になります
粘膜上皮細胞が必要とするエネルギーの約60~80%は腸内細菌が作る酪酸でまかなわれていると言われています。
大腸の粘膜上皮には、水分・ミネラルの吸収や、バリア機能を担う粘液の分泌といった機能があり、大腸が正常に機能するには、酪酸は必要不可欠なのです。

酪酸菌は極めて耐久性の高い「芽胞」という構造を持っているのが特徴です。
芽胞とは、光や温度の影響を弱め、強酸・強アルカリの環境にも対応できるように酪酸菌を覆う殻のようなものです。
通常、乳酸菌やビフィズス菌などの腸内有益細菌はこの芽胞と呼ばれるバリアーがありません。その為、人間の胃酸で大半の有益菌が死滅してしまいます。
一方、酪酸菌は胃酸をバリアー状態で通過して生きたまま腸に届きます。

酪酸の力は腸の健康を保つだけにとどまりません。長寿や免疫との関連、アレルギー疾患、インフルエンザや、最近では新型コロナなどの感染症、さらには糖尿病やがんとの関連が研究され、身体全体の健康維持に貢献している可能性がわかってきています。
そんな酪酸を作り出せる腸内細菌は、酪酸菌だけ。
酪酸菌の存在意義がいかに大きいかお分かりいただけるかと思います。


酪酸菌を増やすには?

繰り返しになりますが、酪酸を作り出すことができる腸内細菌は酪酸菌だけです。
そのため酪酸を増やすには、酪酸菌の働きを促し、腸内の酪酸菌を増やしていくことが重要となってきます。

しかしながら酪酸菌を食事から摂取するとなると、酪酸菌を含む食品は酪酸は臭気が強く、ぬか漬けや臭豆腐など非常に限定されるため、継続的に摂取するのは簡単ではありません。
酪酸菌を増やしたい場合には、酪酸菌入りのサプリメント等を利用するのも一つの手です。

また、酪酸を増やすためには、酪酸菌のエサとなる食物繊維を多く含む食品を積極的に摂取することが大切です。
食物繊維には大きく分けると水に溶けやすいもの(水溶性)と水に溶けにくいもの(不溶性)があり、腸内細菌のエサになりやすいのは水溶性の食物繊維です。
特にのり、わかめ、昆布、寒天、ひじき、もずくなどの海藻類がお勧めです。
食物繊維は成人男性で1日あたりおよそ20g以上、成人女性で1日あたり18g以上摂取することが目安とされています。
そもそもほとんどの人は食物繊維の摂取量が足りていないと言われているので、まずは食物繊維の多い野菜などをしっかりと取り入れ、そのうえで水溶性の食物繊維を意識して摂りましょう。

また、日々の運動習慣も酪酸菌を増やすのに効果的です。
やや息が上がる程度の運動を、継続して週数回ほど行うと良いでしょう。
腸内環境の改善と維持には、食事と運動のバランス良い組み合わせが大切です。

悪い食生活や過度のストレス、抗生物質の過剰な摂取などは、腸内フローラが乱れるとされているので、極力避けましょう。


まとめ

健康的な腸内環境には、酪酸菌がいかに重要な役割を担っているかお分かりいただけたでしょうか。
現在、国内外で「腸内フローラ(腸内細菌叢)」についての研究が盛んに行われています。
さらに、遺伝子解析技術などの急速な進歩により「腸内細菌が作り出す物質」にも焦点が当てられ、その秘められた可能性が少しずつ明らかになってきました。
その中で重要な役割を果たす存在として、ここ最近、特に「酪酸菌・酪酸」に注目が集まっています。

酪酸菌は、美容と健康の両面で活躍するプロバイオティクス原料です。
良好な腸内フローラを維持するためのベースとなっているとも言えるでしょう。
また、長寿者の腸には酪酸菌が多いことが明らかになり、酪酸菌が健康長寿に寄与する新たな可能性が示されました。
今後ますます「酪酸菌」が健康に資する存在と考えられるようになり、将来的には病気の予防や治療に生かされる日が来るかもしれません。

酪酸菌自体を多く含む食品は多くありませんが、酪酸菌は水溶性食物繊維を積極的に摂取することで育てられます。
まずは、食物繊維を摂ることから始めてみませんか?