湯船に浸かるメリット・お勧めの入浴法

まだまだ残暑の厳しい日が続きますが、皆さん、お風呂では湯船に浸かってますか?
「暑くなるとシャワーだけ!」「忙しいから湯船に浸かる時間がない!」という人も多いのではないでしょうか。
でも、それって実はものすごーくもったいない!!
湯船に浸かることによる健康作用は医学的にも明らかにされている上、
なんと、「湯船に毎日浸かる人は幸福になる」とまで言われているんです!!
ある調査で、毎日お湯に浸かっている人は主観的健康感、主観的幸福感がともに高いことが分かっているんですよ♪
その理由は次にお伝えする「湯船に浸かることのメリット」によるものもありますが、
やはり、お湯に浸かってゆっくり深呼吸すると、フーッと体の力が抜けるあの感じ…とってもリラックスできますよね。
お湯に浸かることは、シャワーだけでは得られない効果がたくさんあります。
今回は、お湯に浸かることのメリット、健康効果についてお話したいと思います。


●温熱作用

お湯に浸かると当然、体は温まります。これが温熱作用です。
体が温まると皮膚の毛細血管や皮下の血管が広がり、
血流が良くなり体の隅々の細胞まで血液が行き渡ります。
血液には、酸素や栄養分、ホルモン、免疫物質など、
私たちの体にとって「大事なもの」を運び、
さらに二酸化炭素や疲労物質・老化物質などの
「いらないもの」を回収するはたらきがあります。
しかも、体温が上がることで汗をかきやすくなり、
汗から不純物や老廃物を排出することもできます。
つまり、老廃物でいっぱいのドロドロ血液が
サラサラに変わる体内変化が起きているのです。
また、血行がよくなると筋肉の凝りがほぐれや関節が柔軟になり、
疲れが取れやすくなるメリットもあります。

●静水圧効果

湯船に浸かる事で適度な水圧が体に及ぼす作用のことです。
この作用が全身への穏やかなマッサージ効果を生みます。
水圧がポンプのような働きをして、足にたまった血液が押し戻され心臓の働きを活発にし、血液の循環を促進します。
また、腹部にかかる水圧が横隔膜を押し上げて肺の容量を減少させるため、空気を補うために呼吸回数が増え、心肺機能が高まります。
適度なしめつけによって、滞りがちな血行が促され、むくみの解消にも効果的です。
お風呂に浸かると思わず出てしまう「ふぅぅぅぅ~~」という声。
これも体にかかる静水圧が肺を圧迫して思わず出てくるものなんですね!

●浮力効果

水のなかでは「浮力」と呼ばれる作用がはたらき、自然と体が浮いてきます。
この浮力は、お風呂で湯船に浸かっているときにもはたらいているのです。
お風呂に首まで浸かると、体重は10分の1程度になります。
浮力があることで、常に体の重みを支えている筋肉や関節はその役割から開放され緊張が減るため、
足腰をゆったりと休められることができ、リラックスすることができます。

●免疫力アップの効果

湯船に浸かる事で体の免疫機能を高めることができます。
お湯に浸かると体温が上昇しますが、なんと体温が1度上昇するだけで、免疫力が30%増加すると言われています。
その理由は白血球にある免疫細胞が活性化するため。
また、湯船に浸かる事で汗とともに老廃物が排出され新陳代謝を向上させることができます。
代謝が良くなると免疫力は勿論、体の回復力も向上するため疲れにくくなります。
ほかにも蒸気によって鼻や喉の粘膜が潤うことにより、免疫が高まる事も期待できます。
鼻づまりは鼻腔の炎症によって起こりますが、蒸気によって顔や鼻の血管が動くようになり、つまった粘液をゆるくしてくれる作用もあります。
鼻や喉の乾燥が気になる方は、風呂に入ったときに深呼吸をするとよいでしょう。

●睡眠の質の上昇

寝る2時間くらい前にしっかりお風呂に入り体を温めることで睡眠の質が向上します。
夜、私たちの体温は自然に低くなりますが、それは睡眠ホルモンであるメラトニンが生成されるサイン。
温かいお風呂に浸かると体温が上がり、お風呂から出ると急速に下がるので、メラトニンの生成を後押しし、より睡眠に入りやすくなります。
ただ、入浴してからすぐの状態では寝付きにくくなることもあるので、大体寝る2時間前に入浴するのが良いでしょう。
面倒でもしっかりと湯船に浸かって体温を上げ、睡眠を取りやすくするのも大切なことなのです。

●洗浄作用

お風呂はご存知の通り、汗や異物の付着を洗い流し、体を清潔に保つ役割があります。
体を洗えば異物や汗はしっかりと流せると思う人もいるでしょうが、
実はシャワーだけでは洗浄効果は低く、温かいお湯に浸かることで毛穴が開き、毛穴や皮膚の汚れが落ちやすくなります。
洗浄作用は、肌を清潔にして病気を防ぎ、健康を維持するだけでなく、美容にも重要な作用です。
体を洗う際には、無理に角質を剥がしてしまわないように、石鹸を泡立てて皮膚を優しく洗いましょう。

●リラックス効果

入浴にはリラックス効果があり、上でも書いた通り湯船に浸かる事には疲労回復効果もあるため、
ストレスを鎮静してくれます。
人間の体内にある「自律神経」には、積極的な活動をつかさどる「交感神経」と、体の修復をつかさどる「副交感神経」があります。
仕事のストレスや緊張で興奮状態にある体は、交感神経が優位の状態にありますが、
お湯に浸かってリラックスすることで、副交感神経優位の状態にスイッチが切り替わります。
現代人は、心身への慢性的なストレスが多く、交感神経が必要以上に刺激されていますので、
夜はいかに交感神経のスイッチをオフにできるかが、疲労回復のカギになります。
また体温調節機能や自律神経の働きが低下するのを入浴によって機能的に高めてれるので、心と体の健康に入浴はうってつけ。
香りを加えることによって更にリラックス効果が更に高まるとも言われているので、
お気に入りの入浴剤やバスソルトなどを入れるなどして、大切なお風呂の時間をより一層楽しんでみてはいかがでしょうか。


お勧めのお風呂の入り方

お風呂の効果を最大限引き出す入浴法とはどのようなもの?

●入浴の温度は38〜40度

お湯の温度も重要なポイントです。
私たちの体はたった1〜2℃体温が変わるだけで、体調が大きく変化します。
お風呂も同じで、わずかな温度の違いで、体への効果が変わってきます。
特に注意すべきボーダーラインは、42度。
42℃以上の熱い湯に入ると、交感神経が高ぶり、血圧は上がり、脈拍は早まり、筋肉は緊張します。
一方、内臓の働きは弱まり、食欲は一時的に減退します。
そして神経が高ぶり、その後の睡眠に悪い影響が及んでしまうことも。
特に冬場は熱めのお湯に浸かりたくなりますが、お風呂を沸かすときは適温を守りましょう。
一方、38~40度程度のぬるめの湯は、リラックス状態をもたらす副交感神経を優位にします。
血圧は下がり、脈拍はゆっくりになり、内臓の働きが活性化して消化が促されます。
また、適温での入浴は徐々に体を温めるので、体に負担がかかず、全身をくまなく温めてくれます。
胃腸の働きが活発になり、消化吸収を助けてくれる上、
筋肉が緩むことによって、肩こりや腰痛にもよいと言われています。
就寝前やリラックスしたいときは特にぬるめのお風呂がベスト。
入浴から1〜2時間後に体温が下がるタイミングで心地よい眠気が訪れます。
38〜40度は、人によっては物足りなく感じる温度設定かもしれません。
ですがこの温度の利点は、幅広い年齢層・体力層にとって低リスクだというところ。
のぼせやヒートショックなどの体調不良を起こしにくいという利点もあります。
また、38〜40度でも10~15分くらい浸かれば十分に体が温まるので、
血液の流れもよくなり、疲労回復やリフレッシュ、体の痛みの改善につながります。
いろいろな効果を発揮することができる温度なので、覚えておいて損はありません。

●半身浴より全身浴

かつてブームになった「半身浴」ですが、
半身浴では入浴にとって重要な「温熱作用」の効果が半減してしまいます。
全身浴で肩まで湯船に浸かることがとても大切で、シャワーだけ、半身だけでは
血液が循環せず、お風呂がもたらす温熱効果がしっかりと発揮されません。
しっかりと全身でお湯に浸かって、疲れをとりリフレッシュしていきましょう。
ただし、心臓や呼吸器に不安を抱える方は負担の少ない半身浴がお勧めです。

●お風呂上がりのアルコールは避ける

湯船に浸かると汗をかいて多くの水分が失われます。
一般的には、入浴により約800mlの水分が失われるといわれるため、水・イオン飲料などでしっかりと水分補給をしましょう。
このとき、アルコール飲料を飲むと、水分補給どころか利尿作用により脱水が起こるおそれがあります。
お風呂上がりにビールを飲むのを避けて、まずはしっかりと水分補給を行ってください。
また、お酒を飲んで酔っている状態で風呂に入るのはよくありません。
その理由は血行がよくなり過ぎてアルコールが速く全身に回るようになり、酔いが加速されてしまい、
体に大きく負担をかけてしまうからです。
特に酔いが酷い場合には、風呂場で転んでしまったり、吐き気を催してしまうこともあります。
もし湯船で寝てしまえば大変な事態になる可能性もあるため、酔っているときの入浴は控えましょう。。
もちろん風呂に浸かりながらお酒を飲むのもよくありません。

● 浸かる時間は10分以上

湯船には10分以上浸かることが大切です。
というのも、皮膚の温度は4~5分でピークになるものの、筋温(筋肉の温度)は10分程度かけてゆっくり上がっていきます。
とくに運動をした日は筋肉を使っているので、筋温を上げて循環させることが大事です。
ただし、湯船に浸かる時間は、長ければ長いほど良いわけではありません。
目安として、入浴時間は40℃程度のお湯の場合で、10〜15分程度が一番良いと言われています。
ゆっくりリラックスしたいときでも、20分~30分以内に留めましょう。
1日だけ長風呂するより、毎日湯船に浸かることが大切です。
ただし、顔が汗ばんできたり息苦しさを感じたときは、上記の時間以内であっても湯船から出て休憩を取るようにしてください。
なお、心臓や肺疾患のある人は温度や水圧による作用が負担になりますので、5~10分程度に留めましょう。

●お風呂上がりの保湿は5分以内!

入浴後の肌は皮脂が少なくなっており、バリア機能が低下しているため肌内部の水分が蒸発しやすく、
体が冷めていくときに温度とともに水分も体から逃げていく「気化熱」と呼ばれる現象が起こるため、
肌はあっという間に乾燥していきます。
なので、できれば保湿剤はお風呂に持って入ることがお勧め。
上で5分以内と書きましたが、理想は5秒以内です!
入浴後いかに早く保湿剤を塗るかがポイント。
お肌にうるおいを与えてくれるような入浴剤を入れるのもおすすめです。


毎日何気なく入っているお風呂。
日本で生まれ育つとごく当たり前の生活習慣ですが、
お風呂に入るという習慣は日本特有のもので、
欧米ではシャワーが一般的で、毎日湯船に浸かるということはありません。
日本人の入浴の歴史は長く、約6000年前の縄文時代の遺跡に温泉を利用していた痕跡が残されています。
また、奈良時代には銭湯の起源が見られ、近世には江戸を中心に銭湯が爆発的に増えたと言われています。
また、日本人の長寿は世界的に知られていますが、医学的な研究でもお風呂に入る事は良い健康状態と関連する事がわかってきています。
これはきっと、日本人がお風呂好きなことに加え、お風呂がもたらす「幸福感」にあるのかもしれません。
引き継がれてきた健康習慣を大切に、お風呂のめぐみを上手に活用していきたいですね。
ヘトヘトに疲れてお風呂に入ったら、体だけでなく心まですっきりリフレッシュ。
さぁ、今日はゆっくりとお湯に浸かって、明日への活力を養うリラックスタイムにしてみてはいかがでしょうか♪