食いしばり、歯ぎしり、噛み締めとは?症状と原因、改善法

突然ですが、皆さんにテストです!
姿勢を正して下さい。
唇を閉じて下さい。
このとき、上下の歯は接触していませんか?
実は、上下の歯は常に離れているのが正しい状態です。
もし触れてしまっている場合は、“食いしばり”が癖になってしまっている可能性大!

意外に知られていませんが、“食いしばり”は、寝ている時だけではありません。
日中活動している時に、無意識にしてしまっているケースが多く、
何かに夢中になっている時、ストレスを感じる時など、くいしばりが起こるきっかけは様々ですが、ほとんど自覚はしていません。
また、寝ている間の“歯ぎしり”や“食いしばり”は、それこそ睡眠中なので本人はほとんど気付かず、家族等に指摘されて初めて気づく方が多いようです。
これらは85%~90%の方に発現すると言われており、「自分は絶対していない!」と思っているあなたも、もしかすると食いしばりを防ぐためのちょっとした心掛けをするだけで、驚くほど体の不調が改善されるかもしれません!
今回は、“食いしばり”の原因、食いしばりによって起こる症状と改善方など、詳しくお伝えしていきます。


■起きている時の“食いしばり”とは?

“食いしばり”というと、思いっきり歯を食いしばる行為を想像しますが、軽く歯を接触させているだけでも立派な“食いしばり”であり、歯には相当な力が加わっています。
これをTCH(Tooth Contact Habit =上下の歯を接触させている癖)といいます。

通常、上下の歯が接しているのは、食事の時だけで、1日の中でわずか15~20分と言われています。
それ以外は、舌を上顎につけて、上下の歯は1〜2㎜程度隙間を開けた状態で保っているのが正常です。
ですが、仕事中、勉強中、家事をしている時など、集中している時に上下の歯を合わせてしまう癖になってしまっている人は、
1日に1時間から2時間、上下の歯が触れている状態になっている人もいます。

寝ている時ほどの強い力はかかっていませんが、長時間、頻回なこの癖は、歯・顎・歯茎などにダメージを与えています。
そこから、肩こり・頭痛など、思いもよらない症状を引き起こしている事もあります。
また近年、知覚過敏の最も大きな原因は 歯を常に接触させている“食いしばり”の癖であることが分かりました。
これが進むと歯の亀裂や破折、そして額関節痛までも起こってしまいます。
無意識にずっと上下の歯が触れ合っているのは、それだけで大きな負担になっているのです。
「無意識」ゆえに自覚するのが難しく、改善するのも難しいと言われています。

■寝ている時の“食いしばり”とは?

昼間と夜間、どちらの「食いしばり」もよくないことなのですが、特に夜の「食いしばり」はダメージが大きいと言われています。
睡眠中の食いしばりや歯ぎしりは、無意識の中で行われて抑制が効かないため、100kgを超える強い力がかかっている場合もあります。
おせんべいを噛むときには50キロ、フランスパンをかじるときは30キロとも言われているので、食事をしているときの約3倍以上の力がかかっているとは驚きですね。
一晩の歯ぎしりは、一生分のそしゃくに匹敵するとも言われています。

このような大きな「力」は筋肉を緊張させ、血行不良・睡眠の質の低下などを招き、アゴの痛みに始まり、頭痛・肩こり・腰痛・めまいなどの全身症状につながっていきます。

ただ、歯ぎしり・くいしばりはほとんどの人にみられる癖で、96%の人がしているという報告さえあります。
人それぞれ噛み合わせも咬む力も違い、食いしばりによって現われる症状には個人差があるため、なかには食いしばっていても、なんら問題なく日々を過している人もいます。
今のところ特に問題がない場合は放置しても構わないのですが、ぐっとかみしめる無意識の時間が長く続いてしまえば、やがては身体にダメージが起きてきます。
できれば無用な悪い癖はなくしておく方が良いでしょう。


■食いしばりが原因で起こる症状

・口周りの不調

◇顎関節症

顎関節症の原因は様々なものがありますが、主に「食いしばり」が原因となる場合があります。
食いしばりにより顎に強い負担がかかってしまうと、顎の関節にある軟骨(関節円板)がずれ、変形するなどするためです。
口を開けるとあごの関節が痛む、あごの関節左右の動きにズレがあって違和感があるといった症状は顎関節症である可能性が高いでしょう。
また、口を開けるとき音がする、口が大きく開かない、物を噛むとあごの関節に痛みを感じる、あごが外れそうになるケースも同様です。
特に痛みがある場合は、早期の治療が必要です。

◇歯が欠ける、割れる、歯根が割れる

歯に大きな力がかかることで歯が割れたり、歯根が割れてしまうこともあります。
そうなると噛むたびに痛みを感じたり、歯茎がはれたり、亀裂から細菌が入り、口臭が出る場合もあります。
大きく割れた場合は抜歯しなけらばならなくなりますので、そうなる前の対策が重要です。

◇つめ物が取れやすい

強い力で断続的に歯を揺さぶることで、歯とつめ物を接着しているセメントが少しずつ破壊され、つめ物が外れてしまうことがあります。
つめ物が取れてしまう原因としては、他にもつめ物と歯の間が虫歯になってしまった場合なども挙げられますが、取れたつめ物の下が虫歯にもなっておらず、かつ、何度詰め直しても頻繁につめ物が外れてしまうような場合は、歯ぎしりが原因である場合が多いです。
キレイに外れた場合はそのまま詰め直すこともできますが、調整のために歯を削らなくてはいけないこともありますので、その分、歯はダメージを受けてしまいます。

◇歯がグラグラする

くいしばりにより、歯を支えている歯槽骨という骨に過剰に負荷がかかります。その結果歯槽骨がすり減ったり壊れたりしてしまい、歯をしっかりと支えることができなくなり、歯が動くようになってしまいます。
他に歯周病などの問題が無ければ、食いしばりが改善すれば、治まってきます。

◇歯がすり減る

くいしばりと合わせて、歯ぎしりも行ってしまっている場合は、歯がすり減ってしまうことがあります。
歯のエナメル質同士がぶつかり合うと、お互いに削れを起こし、擦り減ってきます。
特に尖っている「犬歯」が削れて平坦になると元に戻すことが困難なため、注意が必要です。

◇虫歯や歯髄炎になる、歯周病を悪化させる

食いしばりで歯に力が加わると、歯にヒビが入ったり、割れたりし、そこから虫歯菌が侵入し、そこから虫歯が始まってしまう事があります。
更に過度な力がかかることにより、歯に神経(歯髄)に炎症が起きる事もあります。歯髄炎が起きると、歯に強い痛みを感じるようになります。
また、歯周病がある場合は、過度な力が加わる事により、症状が悪化する事があります。
歯医者で歯周病の治療を行なっていても、歯ぎしりによって歯槽骨がダメージを受けている状態では、なかなか歯周病が改善しないケースも多々ありますので、歯ぎしりの傾向がある方は歯周病治療と併用して夜間のマウスピースの着用が必要になります。

◇知覚過敏

歯ぎしりにより歯の表面のエナメル質がはがれ、象牙質の露出が原因で起こります。
むし歯が見当たらないのに冷たいものがしみたり、歯ブラシが当たると瞬間的な激痛が走る場合には、「知覚過敏」の可能性があります。
対処法としては、プラスチックで欠けた部分を埋めるという方法もありますが、歯ぎしりの力が強いとまたすぐに外れてしまうため、早めの根本解決が必要です。

◇歯が移動する

持続的に歯に強い力が加わり続けると、歯が移動し、噛み合わせが悪くなる事があります。

◇骨隆起ができる

歯ぎしりがあると、顎の骨にゆがむ力が加わる事で、ゆがむ力が集中する所に骨にこぶのような骨隆起(こつりゅうき)ができる事があります。

◇噛むと痛い

長時間歯ぎしりが続くと、歯の周囲の「歯根膜」が炎症を起こして噛むと痛くなる場合があります。
奥歯を噛むと上下も左右も痛い等、場所の特定ができない、痛みの位置が変わる等の場合は、虫歯などの病気ではなく、歯ぎしりによって痛みが出ている可能性があります。

・全身的な影響は以下が挙げられます。

◇頭痛

顎を動かす筋肉である側頭筋(頭の側面にある筋肉)が、くいしばりなどによって緊張状態になってしまうために側頭筋が疲労し、頭痛を起こします。

◇肩こり、首こり

食いしばりは、側頭筋や咬筋など、様々な筋肉の緊張が起こります。お口の周りの筋肉は、首や肩に繋がっているものが多く、首や肩のこりを引き起こす事があります。

◇顔の変形

片側だけの「くいしばり」をしている人が一番危険です。
片側だけでくいしばりをしている方は、食事の際も同様に片側だけで噛む癖のある方が多いです。
長期的に片側ににだけ力を加えることによって片側のあごの筋肉が発達して、顔の歪みを引き起こす原因になります。
ひどくなると、目や大きさや頬の張り方が左右で違ってくることもあります。
片側だけ張っているように見えたら、要注意です。

◇表情筋への影響

食いしばりにより、口の周りの筋肉が緊張して固まり、表情筋に影響を及ぼす事があります。ほうれい線が目立つようになるなど、見た目への影響もあります。また、食いしばりによりエラの筋肉が発達しすぎてしまい、顔が大きく見える場合もあります。

◇腰痛

顎の位置がズレると舌骨の位置がずれ、舌骨につながっている筋肉がずれ、それが頭の位置のズレにつながっていきます。
そのずれは背骨のズレにつながり、最終的には腰のずれが起こり腰痛となります。

 


■歯ぎしり・くいしばりの原因

食いしばりの原因は、主にストレスなどの精神的要因です。
それに加えて噛み合わせの悪さなどの物理的な要因も関係しています。

・精神的要因

◇ストレス

食いしばりの主な原因は、ストレスや緊張です。
不安や緊張感を抱いていたり、疲れが出ていたりする方は、ストレスがたまりやすく、それが食いしばりを誘発させてしまいます。
特に、就寝中に起こる食いしばりの多くは、こちらが原因とされています。
対人関係など何らかしらのストレスがあると、交感神経が優位になるので、口の周りの筋肉が緊張し、食いしばる状態になりやすいのです。
逆に、ストレスを緩和するために食いしばりをしているという考え方もあります。
つまり、ストレスが取り除かれると、歯ぎしりが止まる可能性もあります。

◇スマホ

人間の頭の重さは、体重の10%なので体重50㎏の人は5㎏になります。
スマホを見るとき、頭を45度傾けるだけで22㎏の力が首に加わると言われています。
その重さで歯がくっついて噛いしばっている場合があります。

◇肉体労働、スポーツ

食いしばりの主な原因として、肉体労働やスポーツも挙げられます。
なぜなら、人の身体は、歯を食いしばることで強い力を発揮し、集中力をアップさせようとするからです。

◇1つのことに集中する

先ほど、人の身体は集中力をアップさせるために、食いしばりをすることがあるという話をしましたが、
スポーツなどに限ったことではなく、1つのことに集中することでも起こり得ます。
例えば、デスクワークやテレビ鑑賞などに集中している際にも、集中力をアップさせるために、無意識に食いしばっているというケースがあります。

・物理的要因

◇噛み合わせが悪い

食いしばりの原因としては、噛み合わせの悪さも挙げられます。
嚙み合わせが悪く、低い部分や高い部分があると、しっかりと噛むことが出来ずに能が噛む力を強くしようと働きかけ、その結果、食いしばりの力が強くなる事があります。
噛み合わせなどにより顎の筋肉の緊張がアンバランスとなっていることなども影響を与えます。

◇食事の際に奥歯ばかりを使用する

奥歯ばかりを使用していると、奥歯にある筋肉が常に緊張した状態となり、食いしばることが癖になってしまいます。
前歯を使わず奥歯ばかり使ってしまう原因は、柔らかいものばかり食べてしまう点と、食べ物を小さく切ってから食べる習慣にあります。
柔らかい食事を食べるときや、小さなものを食べるときは、前歯を使って食材を噛み切る必要性がありません。
そのため、前歯を使用することが少なくなり、奥歯で噛むことが習慣化します。その結果、奥歯の筋肉が常に緊張し、その緊張が脳にインプットされて、食いしばりを日常的に行うようになってしまうのです。

◇体に合わない金属(アマルガムなど)

歯科手術で、歯に金属を埋め込まれることはよくありますが、この口腔内にある金属が体質に合わず、自然と食いしばってしまうといったケースもあります。


歯ぎしり・くいしばりの予防や対処法

食いしばりは、ストレスなどの精神的要因と、お口の中の噛み合わせなどの要因など、様々な要因が重なって起こります。
ですから、「これをしたら必ず治る」という治療法はありません。
いくつか効果的な方法がありますので、これらを組み合わせて行っていく事が必要です。

◇自己暗示療法

最も簡単そうでありながら最も難しく、しかし最も効果的な対処法であり、うまくいけば半永久的に効果がある方法です。
「唇を閉じて、上下の歯を離し、顔の筋肉の力を抜く」ことを意識するだけ!
常に自分で意識して、くいしばらないように暗示をかけることを1日に何度も練習してください。
無意識化で行われる癖を治すのは、そう簡単にできることではありません。
まず、本来人間の上下の歯が接触するのは、物を噛むときと飲み込むときだけだということを頭に入れておきましょう。
始めのうちは、口を半開きにするのも良い方法ですが、人前をはばかるようでしたら、唇は合わせてもよいでしょう。
そして、常に目に入る場所に目印や付箋を貼っておいて、気づいたら歯を離すようにするなど、無意識で行っていた癖を意識させていくのも手です。
そして、「噛まない」「歯を合わせない」「開いて寝る」などと自分に言い聞かせます。

眠っているときのことなど、コントロールできないと思っている人が多いと思います。
しかし、「明日の朝何時に起きなければいけない」と思って寝ると、不思議とその時間に目が覚めるという経験をしたこともあるかと思います。
眠っていても潜在意識が作用して、無意識でありながらまるで意識したかのようにできた経験がある方も多いはずです。
成功の秘訣はどれだけ「その気」になるかにかかっています。

効果の即効性がないことや、本人の努力次第で治療の成果が左右されるので効果が出ない人もいるというデメリットもありますが、
食いしばり対策は、まず自分で気づくこと(認知すること)から始まります。
もし気づいたら顎の力を抜いて、上下の歯を離してください。ついでに肩の力も抜いきましょう。

◇マウスピース

歯科医院で歯の型を取り、自分専用のマウスピースを作成し、夜寝ている間に装着して、寝ている間に無意識に食いしばりをするのを防ぎます。
就寝時は強い力で長時間してしまう事も多く、歯や歯ぐきへのダメージが強くなるので、マウスピースを装着する事で、力を分散させ、ダメージを軽減する方法です。
歯ぎしりそのものを防ぐのではなく、歯ぎしりによる莫大な力によって歯が破壊されてしまうのを防ぐためのものですので、歯ぎしりや食いしばりの根本的な解決にはなりませんが、症状を緩和するという意味では有効な手段です。
保険適用の場合、3割負担の方で5千円前後の費用がかかります。
市販品もありますが、歯並びが動いてしまうような危険性もある為、あまりおすすめはされていません。

◇噛み合わせの治療

噛み合わせが悪く、高い部分や低い部分があると、食いしばりを助長させてしまう事があります。
そのような場合は、歯科医院で噛み合わせを調整してあげることで、食いしばりや歯ぎしりを緩和させることが可能です。
原因の可能性のあるかみ合わせの不備の有無を調べます。必要であれば歯の治療や高さの合わない冠の調整などを行います。
歯の抜きっぱなしも、かみ合わせに悪影響を及ぼしている場合があります。

◇体の緊張をほぐすのストレッチ運動・脱力運動

食いしばりは、無意識に筋肉が緊張することが原因なので、体の緊張をほぐせば、改善することがあります。
首・肩・手足・腰などを伸ばす運動をし筋肉の緊張をほぐしましょう。
また、筋肉を脱力させる感覚を得るためのトレーニング法もあります。
手を思い切り上に伸ばして緊張させてから、一気に肩の力を抜き脱力させたり、
肩をぐっと上に挙げて一気に力を抜き脱力させます。
このとき息を吐くことを意識しましょう。
このように筋肉を緊張させて、脱力させる運動を何度か繰り返すのが効果的です。

◇頬杖などの癖を治す

特に頬杖は思っている以上に顎に負担をがかかります。顎関節に偏った力がかかり、噛み合わせが悪くなり、食いしばりを助長させてしまう事がありますので、気づいたらやめるようにしましょう。
他、顎をつき出さない、 猫背にならない、など姿勢に注意しましょう。
同じ姿勢を続けない、時々休憩とってストレッチをする、なども大切です。

◇寝ている時の姿勢を改善させる

顎や首・肩に負担をかけない事が大切です。
横向きで寝る姿勢は、片方の顎に偏った力がかかってしまうので、上向きで寝ることをお勧めします。
また、枕を高くしすぎると、首や肩に負担がかかるので、高すぎないようにしましょう。

◇ストレスの発散

くいしばりは、引越しや入学、転職といった環境の変化や大きなストレスが加わったことが原因で起こることがあります。
ストレスを軽減できるように、自分なりのリラックスする方法を見つけることも大切です。

◇食事中に注意する

極端に固い物を噛むことを控えるようにしましょう。
食事時はできるだけ強く噛まずに、噛む回数を増やすことを意識しましょう。

◇咬筋マッサージ

歯ぎしり、食いしばりがある方は、咬筋がとても緊張しています。
咬筋は、奥歯をぎゅっと噛み締めた時にガチっと固くなる部分ですが、その部分をマッサージでほぐす方法も有効です。
円を描くようにしたり軽く押したりして緊張をほぐすように行なってください。
そうすると強い噛みしめによる負担を一時的に和らげることにつながります。
日中、噛み締めに気がついた時やお風呂に入っている時、寝る前など、日常的に繰り返していくと、お口にかかる負担を抑えることができます。

◇舌の位置を意識する

歯ぎしりや食いしばりをする方に多いのは舌が正しい位置に置かれていないことにも原因があります。
本来舌は、上顎の歯の後ろ側にある軟口蓋部分のスポットと呼ばれる位置にあり、舌は常に上顎にくっついている状態になっています。
しかし、舌の筋力が低下しているなどの理由から舌の位置が下がってしまうと、上下の歯を接触させやすくなり、日常的に食いしばりをしやすくなってしまいます。
また、舌の位置を正しい位置に修正することにより体の重心バランスも修正されるため、姿勢が改善されたり、唾液の分泌を促進することでドライマウス防止に繋がる効果も期待できます。
舌が下に下がっている方は、上顎にくっつけるように意識しましょう。
また、舌トレーニングとして、舌を正しい位置(上顎の歯の後ろ側あたり)にぐーっと押し付け、そのまま力を入れて10秒キープ。
そして舌先はつけたまま力を抜く。というのを1日何度でも繰り返してください。
意識して繰り返すことで筋肉が記憶して舌がいつも同じ場所に置かれるようになります。
日中、何かに集中する時も歯を食いしばるという癖のある方は、歯を食いしばる力を舌先に集中してみるのも良い方法です。

◇ボトックス注入療法

ボトックス治療とは、ボツリヌス菌から抽出されるたんぱく質の一種を過度に緊張している筋肉に注射することで、一時的に緊張をほぐす治療法です。
歯ぎしりや食いしばりをしている人のほとんどは、咬筋(主に食べ物を噛む時になどに使われる筋肉)が過度に緊張し、必要以上に発達している傾向があります。
この咬筋の過度な発達と固く萎縮した筋肉を緩めることができ、食いしばりや歯ぎしりするときの筋力そのものを弱める形になります。
今までと同じように食いしばっても力がそこまで入らないため、食いしばりや歯ぎしり自体をやらないようにしたい、という方には、画期的な方法でしょう。
ボトックス注射は、皮膚に直接注射を打つので注射が苦手な方にはハードルが高い治療になります。
また、咬合力が弱まるために噛むときに顎が疲れるというデメリットもありますので、歯科医としっかり相談してから決断しましょう。

 

■くいしばり、歯ぎしりのセルフチェック!

食いしばりの兆候がないかチェックしてみましょう!

☑食いしばりで目が覚めることがある
☑歯が欠けたり割れたことがある
☑上下の歯の噛み合わせ面がすりへり平らになっている
☑詰め物がよく取れる
☑知覚過敏になりやすい
☑頬の内側に歯のあとがついている
☑起床時に顎に疲労感がある
☑起床時に歯が浮いている感じがある
☑無意識に歯をくいしばっていることに気づいたことがある
☑舌の脇の部分が、歯の形がついて波のようにみえる。でこぼこする
☑頬内側の歯が当たる箇所に白い線がある
☑眠っている時の歯軋りを指摘された経験がある
☑歯と歯茎の境目に削られたような不自然な傷がある
☑あごの関節や、エラのあたりを押すと筋肉に痛みが出ることがある
☑集中しているとき(車の運転、パソコンのキーボードを打っているときなど)に無意識に噛みしめている。
☑肩こり、頭痛が多い。
☑歯槽骨にこぶのような骨隆起(外骨症)がある。
☑虫歯でもないのに歯がしみる(知覚過敏)。
☑歯と歯肉の境目に削り取られたような傷がある
☑耳の穴から1cmほど手前にあるあごの関節を押すと痛みがある
☑あごのエラの部分の筋肉に痛みを感じる
☑歯の表面に亀裂(クラック)がある。

上記の項目で当てはまる数が多いほど、くいしばりや歯軋りを無意識に行っている可能性が高くなります。


■歯ぎしり・くいしばりと低血糖

あまり知られていないことですが、歯ぎしり・くいしばりの原因が“夜間低血糖”にある場合があります。
夜中に目覚める、夢ばっかり見る、歯ぎしりがひどい、朝から肩こりがあるといった症状がある人は、睡眠の質が低いと考えられます。
これらの症状がある場合は、「夜間低血糖」(寝ているときに血糖値が下がってしまっている状態)を疑ってみましょう。

寝ている7-8時間の間は食べることも飲むこともできませんよね。
それでは、血糖値は下がり続けているのか?
実は、通常人の体は就寝中も血糖値が下がらないような仕組みが備わっています。
熟睡しているとき、成長ホルモンとコルチゾールが分泌され、肝臓に働きかけて、肝臓に貯蔵しているグリコーゲンをグルコースに分解します。
こうして、寝ている間の血糖値を保っているのです。

ただこれが、日中のストレスが強い、日中や寝る前の血糖値の変動が激しいなどの理由で、寝ているときに低血糖になってしまうのです。
人は、血糖値が急に上がりすぎてしまうと、今度は急に下がりすぎてしまう為、低血糖を招いてしまうのです。
この急降下の時、体は危険を感じ、アドレナリン、ノルアドレナリンを分泌して、血糖を上げようとします。
アドレナリン、ノルアドレナリンが分泌されると、からだは緊張し力が入ります。
そして食いしばったり、歯ぎしりが起こるのです。

お酒を飲みすぎてもアルコールの作用で低血糖を招きますし、カフェインをとりすぎても血糖値が上がる分、その後の低血糖を起こし、歯ぎしり・くいしばりにつながる方がおられます。

【夜間低血糖を予防する方法】

夜間低血糖を起こしている人は、日中も血糖値の変動が激しいので、なるべく血糖の乱高下を抑えるようにすることがベストです。
ご飯や麺類、パン類などの糖質を多量に摂取すると、血糖値が急に上昇するので、できるだけこれらを避け、
なるべく「血糖値を急激に上げない食事」を心がけることが大切です。
お腹が空く前に間食をしたり、夜寝る前に蜂蜜を舐めるするなどもコツです。

「寝る前のティースプーン1杯のはちみつ」は、夜間低血糖を予防するために有効的です。
はちみつは、血糖値を緩やかに上げて、長時間血糖値を安定させる働きがあります。ブドウ糖と果糖がバランスよく入っていることが、この血糖値の安定を作ってくれていると考えられています。
夜中に目が覚める、噛みしめがある、しっかり寝ているつもりなのに日中に眠い、というのであれば、ぜひ寝る前にティースプーン1杯のはちみつを試してみても良いかもしれません。

また間食は、血糖値を上昇させないタンパク質や食物繊維がおすすめです。
できるだけ低糖質のもので小腹を満たすと、血糖が上昇しないので、夜間低血糖が予防されます。

日中の血糖値が穏やかになると、夜間低血糖もなくなります。
日中の血糖コントロールは、夜の低血糖対策のため、ひいては翌朝、気持ちよく起きるためにも大切です。

夜間低血糖の場合、ご自身は寝ているのでなかなか自覚することはできませんが、起きたときの症状からも夜間低血糖を推測することができます。

・夜中に起きてしまって寝付けない
・寝汗や歯ぎしり、悪夢をみる
・午後3時ごろ眠気に襲われる
・朝起きた時肩こりや疲労感がある
・理由もなく不安感を感じる
・感情の起伏が激しい
・朝、寝違えて首が痛い、朝から肩こり、腰痛のある
・朝起きたとき、手がしびれている
・朝起きるのがつらい

このような場合は、「夜間低血糖」を一度疑ってみましょう。


たかが上下の歯が軽く接触するくらいで…と思った方もいるとは思います。
しかし、食いしばりの癖は、歯や歯ぐき・顎関節を痛め、様々な悪影響を及ぼします。
また、口の周囲の筋肉にも影響が及ぶため、頭痛や肩こりなどの全身症状を引き起こす事もあります。
口の中、あご、そして全身の健康を長く保つためにも、おおげさな表現ではなく、むし歯予防、歯周病予防と同じくらい“食いしばり治療”も重要であると言えるでしょう。

一般的に、人間の噛む力の強さは、自分の体重程度の力と言われています。
それが、睡眠中、無意識下となると、歯ぎしり・食いしばりの際の噛む力は、自分の体重の2倍~5倍にもなります。
つまり女性でも100kg以上の力が毎日歯や顎にかかるのです。
歯ぎしりをしている人と遭遇したことはあるでしょうか?
ギリギリ、ゴリゴリと音を立てる程上下の歯をすり合わせています。
ですが、日中起きているときに同じような音を鳴らせる人は、ほとんどいません。
これは無意識の中でいわゆる火事場の馬鹿力で歯をすり合わせているのです。
このような大きな負荷が常習的かかれば、体に悪影響を及ぼすことは容易に想像できるでしょう。

「私は絶対に食いしばりなんてやっていない」「音が鳴らなければ周りに迷惑をかけないので、別に対策しなくても大丈夫」と思っている方もいるかと思います。
ですが、食いしばりや歯ぎしりは、自分が思っている以上に歯や顎に大きな負担をかけているもの。
まずはこのような力から歯を守るためにも、ますはご自身の食いしばりを自覚することがとても重要なのです。
無意識でやっていることを止めるのは非常に困難なことですが、歯がダメになってしまう前に、なるべく早く症状に気付いて歯を守ってあげましょう。
そしてストレス社会と言われる現代において、完全にストレスをなくす生活を送ることは不可能ですが、
ストレスと上手に付き合えるよう工夫するとともに、歯や顎をストレスから守るための対策をしっかりと行うことが大切です。
ぜひこの記事を参考にしていただいて、「食いしばり」から開放され、健康で快適な生活を手に入れましょう!